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カイザー・ソゼという男

「カイザー・ソゼは何者なのか?」と、よくコピーに謳われているように この作品は謎解きものなのだ、と観る前から身構えることができる。 それでも、最後のどんでん返しに、アッと驚かされてしまうということは この「謎」は、そう簡単には解けない難題なのである。
カイザー・ソゼ

◆ その正体への手がかり

・左利き

冒頭の船上でキートンを撃つシーンでは、ライターで火をつけ、タバコを吸い、 銃を構えるといった一連の動作で、ソゼが左利きであることがわかる。 ヴァーバルが回想するトルコ時代のソゼもちゃんと左利きである。 ところが、それがヴァーバルとなると左半身不随であるため、 ライターでタバコに火をつけようとしてもうまくいかない、 という露骨な表現で「左手は使えない」と印象づけているところがかなり臭い。 ちなみに面通しの5人組は、銃を使うシーンなどから、全員右利きであることがわかる。

・銃を横に構える

同じく冒頭のシーンでは、キートンを撃つときソゼは 銃を横に構えている。 これも何やら意味深な動作であるが、もう一人銃を横に構える男が登場する。ホックニーである。 ここで、ソゼ=ホックニー?と疑ってしまうのは、完全に罠にはめられてしまった事になる。 なぜならホックニーは右利きだから。
銃を横に構える   銃を横に構えるホックニー

・金のライター、金の腕時計

更に同じく冒頭のシーンでは、ソゼが身につけている小物が明らかになる。 このうち、銃を除いた物といえば、ライター、タバコ、腕時計である。 これは、ヴァーバルがクイヤンの尋問を終えて、警察を後にするときに返却される物と、完全に一致する。 特に、ソゼがライターでタバコの火をつけるシーンは、幾度となく挿入されているので、 その色までも確認することは難しくはないだろう。

・小便

上述の通り、冒頭の船上シーンは後にヴァーバルができないと言っていることを、カイザー・ソゼがすべていとも簡単にやってのけるという対比になっている。 豪快に立ち小便をして導火線の火を消すのもその一つで、クイヤンとの尋問の際には、麻痺・障害のためか「小便がドロドロになる」と言っている。
ちなみに、ヴァーバルは小便について、「こんな小便のようなまずいコーヒー」や「血尿が出る」と数多く口にしているが、他のメンバーは誰も語っていない。

・ヴァーバルのみ欠落しているもの

この謎解きの中で重要な意味を持つ回想シーンは、ヴァーバルの回想によるものであり、 彼があえて言わなかったり、嘘を言ったということも考えられるが、 面通しの5人組の中で唯一、ヴァーバルのみに無い事柄がいくつかある。
  • 面通しに至るヴァーバルの逮捕シーン
  • 面通し後のヴァーバルの尋問シーン
  • コバヤシが初めてソゼの名を口にした時、ヴァーバルだけが知らなかった
  • コバヤシとの面会で渡された、過去の犯罪記録を示した資料の中身(紙はあるけど白紙?)
ヴァーバル逮捕   5人組

・ロープの束

冒頭の船上のシーンとヴァーバルの回想シーンで、船が爆発する瞬間に、 岸壁にある山のように積まれたロープの束を映している。 初めてこのロープの束を見ても何のことかは理解できないが、2回目ではそれが解決される。 船上でソゼがキートンを銃で撃つ瞬間を、ロープの束の後ろ側からヴァーバルが覗き込んでいるのだから。 しかし、ヴァーバル=ソゼと判明した以上、このヴァーバルの行動は「嘘」ということになる。 となると、1回目の真実を語っている船上のシーンにおいては、このロープの束は何も意味をもっていない。 つまりは、このロープの束は「引っかけ」なのだ! 二度目にこのシーンが登場するのは、ヴァーバルの語る嘘の証言の中であり、 このことに真実味を持たせるためのトリックとして、冒頭のシーンに使われているといってよいだろう。 そこまでして、ソゼとヴァーバルの存在を引き離そうとしているのだ。
ロープの束

・ソゼルック

冒頭の船上でカイザー・ソゼが登場する際の衣装、黒のロングコートにハットという、いわゆるソゼルックは、じつは現地調達したものである。 ソゼの最大のターゲット:密告屋アルトゥーロ・マルケスが隠れている船の小部屋の壁に、この衣装が掛けられている。 この小部屋のシーンは何度か出てくるものの、ソゼルックを確認できるのは最初の1回目だけで、 しかも右端にあって、カメラはすぐにパンしてしまうので、一瞬しか映らない。
ちなみに、なぜロングコートにハットなのかというと、『ミラーズ・クロッシング』という映画で主演のガブリエル・バーンがこの格好をしており、 同作のファンだと語っているブライアン・シンガー監督が、同じ格好をさせたかったから。
ソゼルック

◆ 結局何をしたのか?

結局、このカイザー・ソゼという男は、この作品の中で何をしたのであろうか? 最大の目的は「自分の顔を知っている密告屋:アルトゥーロ・マルケスを殺すこと」であると思うが、 ソゼ自身が「その事実を巧みに隠蔽する」 ためにとった行動こそがこの映画のメインテーマである。 そのために、キートンほか数十人の人間を道連れにし、身障者を装って容疑者となり、 嘘の証言をして、担当刑事に自分以外の人間を犯人と思い込ませて、難なく釈放された。 と、ここまではソゼの計画としては完璧であったが、実は二つミスを犯していた。 一つ目は自分の顔を知るもう一人の男(火傷を負ったアーコシュ・コバッシュ)を生かしてしまったこと。 二つ目は、最終的にクイヤンにばれてしまったことである。もっとも、この二つのミスがなければ、 この映画を観る側としては何も楽しくないだろうし、ソゼに騙されっぱなしのまま終わってしまうところだった。

◆ 名前の秘密

 カイザー   [keyser]  (特別な意味はない)
 [kaiser]  ドイツ語で「皇帝」
 ソゼ   [soze]  トルコ語で「おしゃべり」
 ヴァーバル   [verbal]  英語で「おしゃべり」
トルコの箱

ヴァーバルはソゼのうわさ話の中で、「ソゼはトルコ人で、彼の父親はドイツ人らしい」と言っている。 つまり、カイザー・ソゼという名前のヒントを自分自身で解説していた、ということなのだろうか....。

脚本家クリストファー・マックァリーが、かつて法律事務所で働いていたとき、カイザー・スメという名前の上司(弁護士)がいたという。 その名を拝借しようとしたが、本人からNGが出て、「スメ」→「ソゼ」に変えたとのこと。

Keyser Soze のイニシャルは、K.S。
そういえば出演者の中にも、同じイニシャルの人がいたような....。

◆ ヴァーバルはカイザー・ソゼではない説

さて、ここまで延々とカイザー・ソゼの正体について語ってきたのだが、 劇中で「自分がカイザー・ソゼだ」と名乗った人間は、実は誰もいない。 ということは、ヴァーバルがカイザー・ソゼではない可能性もあるのだ。 我々が、カイザー・ソゼ=ヴァーバルと理解したのは、 病院からFAXされてきたカイザー・ソゼの似顔絵が、 どう見てもヴァーバルその人だったという、ラスト近くのワンショットだけの情報からである。
ここで以下のような仮説が考えられるとしたら、 また『ユージュアル・サスペクツ』を見る目がガラリと変わってくる。
  • カイザー・ソゼがヴァーバルに向かって、自分の影武者を演じるように指示していた
  • カイザー・ソゼの人相を語ったアーコシュ・コバッシュが、ヴァーバルがカイザー・ソゼだと勘違いしていた
■1.カイザー・ソゼ=コバヤシ説
KOBAYASHI まず、これが最も考えやすい説。 理由は、最後にヴァーバルを車で迎えに来たのがコバヤシだったから。 保釈される時間もほぼ知っていたことから考えると、 貨物船爆破現場に残っていて逮捕されたヴァーバルに関して、 警察上層部や知事に圧力をかけていたのも、 コバヤシ本人だろうと容易に想像できる。 「すぐ出れるようにしとくからさ、ちょっと捕まって、 適当な話で警察のヤツらを軽くあしらってこいや...」 なんて、ヴァーバルに指示してたりね。
また、ラストの運転手以外でコバヤシが登場するのは、 ヴァーバルの回想シーンの中だけであり、 自分とボスの関係を逆転させて嘘の話しにするなんてのは、 最も簡単な方法ではないだろうか。
■2.カイザー・ソゼ=イーディ・フィネラン説
EDIE コバヤシ以外の人がカイザー・ソゼだと考えるとき、 その人が当然ボスで、手下にヴァーバルとコバヤシがいるという、 少なくとも3人組の構図になる。 イーディの肩書きはコバヤシと同じ弁護士で、 コバヤシがイーディをサポートしている回想シーンがあったり、 面通し5人組のリーダー、キートンのパートナーでもあることから、 ソゼの正体として二番手の候補に挙がるのは妥当な線だろう。 しかしラスト近くで、イーディがホテルで殺されていることが判明するが、これをどう捉えるか。
イーディ(=ソゼ)に「貨物船に乗り込んで、アルトゥーロ・マルケスを消してこい」 と指示されたヴァーバルか、その相棒コバヤシが、突然裏切ってイーディを殺害したのかもしれない。
■3.カイザー・ソゼ=ジャック・ベア説
BEAR ミステリーの結末として警察側の人間が黒幕だったというのは、意外性もあって面白い。 『ユージュアル・サスペクツ』の場合も、いろいろな立場の警察側の人間が登場するが、 他の誰よりもフットワーク良く動いていたのがFBIのジャック・ベアだ。 その足取りを追うと、 @貨物船爆破現場、 Aアーコシュ・コバッシュが搬送された病院、 そして、ヴァーバルのいるBサンペドロ警察という順になる。 彼がカイザー・ソゼだと考えると、実に無駄がなく、納得させられるルートだと気づかされる。
まず、ベア(=ソゼ)の指示でヴァーバルがアルトゥーロ・マルケスを消したのを確認するため、港へ行った(→@)。
次に、半殺しの状態で生かしたアーコシュ・コバッシュが、影武者であるヴァーバルをソゼと思い込んでいるかを確認するために、 自ら病院へ出向き、その人相を話すように指示した(→A)。
最後は、保釈されるまでのヴァーバルが余計な事を言わず、警察を煙に巻いているかを確認しに行った(→B)。
それをヴァーバルに直接会うこともなく、盗聴器越しに聞き、 更には病院からのFAXを自ら受け取り、「よしよし、ちゃんとヴァーバルの顔が描かれているな」と、全て作戦通りに運んだことを見届けたのだ。
■4.カイザー・ソゼ=ディーン・キートン説
キートン クイヤン捜査官が終盤に結論を出すこの説は、海外ではよく考えられる考察のようだ。 ただし、ブライアン・シンガー監督からのネタバレとして、シーン3→4に移った直後の 港の焼け焦げた死体がキートンだと判明しているので、まずはこの前提で考えてみる。 ソゼ=キートン→ヴァーバル+コバヤシという指示系統になるとして、最終的に殺されているのだから、 ヴァーバルかコバヤシが裏切ってキートンを殺害したことになる。これは上のイーディ説の場合と同じ。
また、真実と捉えている冒頭の船上シーンで、キートンが銃を撃つ人間に向かって「脚の感覚がないよ、カイザー」と言ったのはどういう意味か? 銃を撃つ人間=ヴァーバルとして、「脚の感覚がない」は彼に向けた皮肉だとしても、「カイザー」は誰のことを指すのかが争点になる。 ここはやはり、キートンがヴァーバルにソゼの影武者を演じることを事前に指示していて、最終的に裏切られて船上で撃たれたので、 お前がカイザー・ソゼの名を受け継ぐんだな、という皮肉を込めて言ったと考えられる。
■番外編.カイザー・ソゼは誰でもない説
ミステリーの結末として、真犯人は誰でもない(もしくは、容疑者全員が犯人)というのはありうるケースである。 『ユージュアル・サスペクツ』の劇中で、カイザー・ソゼを表す抽象的な言葉として以下のようなものが登場するので、 深い考察を諦めれば、そういう結論になるのはたやすい。
  • 悪魔、亡霊、妄想、幻
  • 残忍な殺し屋、伝説のギャング
  • 架空の人間、誰かの隠れ蓑、魔除けの名前